
不眠症に対するメラトニン治療は、施行にかなりの労力を要する光療法や時間療法のような生理学的治療に比べ、経口服薬で手軽にでき、効果も期待できるとして注目を浴びています。特に高齢者の不眠治療に応用した研究では、メラトニンが睡眠障害に働きかけ安定した眠りに導くことが明らかにされています。では、高齢者の不眠に対するメラトニンの作用について説明していきます。

●少なくなった「メラトニン」を補給して不眠を改善!?
高齢者の不眠は、夜間メラトニン分泌の低下と関連するといわれています。このため、高齢者不眠には少なくなったメラトニンを補給する「メラトニン療法」が有効であるといわれています。
高齢者不眠に関する多くの研究において用いられたメラトニンの量は3mg程度までの範囲であり、用量比較研究においては、0.3mgという生理的範囲内の量の投与で、はっきりと不眠改善効果が得られたそうです。さらに、不眠が現れる頻度が極めて高い病院入院中の高齢患者に対しても、メラトニンは有用であると報告されています。さまざまな研究結果から、身体疾患を持っている高齢者の不眠にはメラトニン分泌の低下が関与しており、メラトニンを投与することで不眠改善をもたらす可能性があることが明らかになってきました。
●メラトニンで睡眠薬を断ち切る!?
では、メラトニンは睡眠薬に代われるのでしょうか。ここで、メラトニンと不安や興奮などを抑制することで眠気を誘う睡眠薬、ベンゾジアゼピン(benzodiazepine)製剤との関連についてお話します。
ベンゾジアゼピン(benzodiazepine)とは、睡眠薬や抗うつ剤に広く利用されている物質です。1960年代頃から使われ始め、比較的耐性が出来にくく、毒性が低く安全であるといった特徴があるため不眠や不安などの薬として利用されるようになりました。不眠治療においてベンゾジアゼピン系睡眠薬とメラトニンの併用が有効かどうかという点についての検討はまだ十分ではありませんが、メラトニンの使用によってベンゾジアゼピン系睡眠薬の減量は可能だとされています。日中の投与に際するメラトニンとベンゾジアゼピン系睡眠薬の催眠効果は同程度と報告されており、この場合かなり高用量のメラトニンを使わないとその効果が明らかにならないことがあるといわれていますが、副作用の多い睡眠薬をできるだけやめて、徐々にメラトニンに切り替えたほうがいいのはいうまでもありません。
不眠に対するメラトニンの効果は、日中戸外にいる時間が長い人ほど高いといわれています。また、情緒不安定・不安・心配などの神経症的色彩の強い人には効果が乏しいようです。そのため、不眠不安・緊張亢進が存在する場合には、静穏・抗不安効果に優れたハーブなどを併用するほうが良いとされています。
●睡眠薬と比べるとほとんど副作用の心配がないメラトニン!
メラトニン治療による副作用としては、高用量使用による体温下降、日中のメラトニン値上昇、性腺抑制などが挙げられていますが、6ヶ月の長期投与によっても性腺ホルモンなどへの影響はなく、安全性は高いことがわかっています。一方、ベンゾジゼアピン系睡眠薬が、認知機能に悪影響をもたらすことはよく知られています。メラトニンについてはこのような可能性はほとんどなく、むしろメラトニンを投与することによって記憶機能の改善や気分の向上が得られるとの報告もあります。
●メラトニンでリラクゼーション?鎮静作用?!
一方の説として、メラトニン分泌量が低下しているのは、加齢の影響よりも、日光を浴びることが少なくなったり、退職などによる活動性の低下などの要因にともなう二次的なものである可能性が高いともいわれており、メラトニン服用によって得られるのは直接の睡眠効果ではなく、リラクゼーションもしくは鎮静作用であるという報告もあります。
いずれにしても、リラクゼーションにしても、鎮静作用にしても、快適な睡眠に欠かせないとして需要が増えてきているのは確かです。
<参考文献>
*メラトニン研究の最近の進歩
三池輝久・山寺博史 監修 メラトニン研究会 編
※ここに記載してある内容は、資料に基づいた内容であり、弊社が保証するものではありません。あくまで参考としてご覧下さい。
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